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 不良債務は処理できる
  −企業の再編と再生による不良債務の処理を中心に扱う−

       今の日本経済の足を引っ張る不良債権処理の原理は?
       不良債権の本質とは?
       不良債権を処理するのは誰か? 債権者or債務者?
       不良債権処理の具体的な方法は?
  

 

不良債権処理の具体的な方法は?


  倒産の危機が近づきつつある企業が打てる手としては、民事再生法に基づいて裁判所に開始決定と保全命令を申立する方法があります。民事再生手続きにも、企業のコアとなる十分な競争力がある部分を企業の外に取り出す方法が規定されてはいます。開始決定後の営業譲渡の方法です。この点で、民事再生手続きと会社分割とはよく似た手法であるということができます。
しかし民事再生手続きは、企業のコアを外に取り出すことによって「過剰債務の原因となっている不採算部門から切り離す」にしても、そうすることによって「十分事業の再生を図ることが可能であ」るという方法ではないのです。むしろ民事再生手続きによってコアとなる競争力のある部分を外に取り出した場合は、その取りだした事業は別の「企業体」によって生き延びていくことができるにしても民事再生を「申し立てた企業」そのものはコアとなる事業部門を失い、残った事業部門だけで生き延びていくか、あるいは企業体として消滅していくという方法なのです。
これを逆の面から言うと、民事再生手続きでは、コアとなる「事業」を外に取りだして生き延びさせる手法ではあっても、従来の「企業体」そのものを生き延びさせる手法ではないのです。つまり、民事再生法は事業再生法ではあっても会社再生法ではないのです。

  民事再生法適用の下でコアとなる収益性ある事業部門だけを外へ取り出す営業譲渡をし、その対価である営業譲渡代金を受領して債権者に配分し、企業体本体としては民事再生計画の中で清算・消滅の道を歩むということでよいのでしょう。その方法で裁判所の認可も得られます。しかし、この場合はコアとなる事業部門は人の手に渡っています。それでもよいのでしょうか。

  コアとなる部分が人の手に渡ってもよい、というのであれば、なにも、民事再生法の適用などという手続き的に面倒で費用のかかる方法を執る必要はなかったのです。営業譲渡は、商法上、株主保護手続きが規定されていますが、債権者保護手続きがなく、株主保護手続きも債権者保護手続きも整備されている会社分割よりも、より簡単な手続きです。このため、コアとなる部分の営業譲渡を行い、譲渡代金を債権者に支払い、民事再生の申立などしないまま、解散し清算の道を歩めばよかったのです。
それどころか、人の手に渡ってもいいというのであれば、営業譲渡もしないで、もっと簡単で費用のかからない方法は外にいくらでもあります。私たち筆者は、コアとなる事業部門が人の手に渡ってもよい、などとは考えません。なぜなら、私たち筆者は中小企業の側に立って考えていますし、コアとなる事業が人の手に渡るときは、中小企業は即、企業体として死を意味するからです。
それだけでなく、事業経営者は個人としても破滅してしまうからです。経営者は、大企業と違い、会社債務を連帯保証させられているのです。中小企業経営者は、連帯保証によって、無限責任を負わされているのですから、会社の死は個人の死なのです。この本を読んでいるあなたも、きっと、収益性ある事業部門が生きていくのであれば、企業体は消滅してよい、などと考えるほど、お人好しではないでしょう。


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