後藤孝典が語る

弁護士法人 虎ノ門国際法律事務所 代表弁護士
一般社団法人日本企業再建研究会理事長

2013.11.06

立法権はどこにあるか、憲法違反の婚外子最高裁決定

 

最高裁が、婚外子の法定相続分を嫡出子の法定相続分の二分の一と定める民法900条4号但し書きは、憲法14条に違反して無効であるとする決定を、この9月4日に出しました。これを受けて、法務省は国会に民法の上記規定を削除する法案を提出しました。しかし、国会ではこの法案に反対する意見が出され、まだ決着がついていないようです。さすが骨のある議員もいます。

 

ネットで見たところ、議員の反対意見は家族制度の崩壊に繋がるという点のようです。その反対意見はもちろん核心を突いていますが、実は、この最高裁の決定にはもう一つ、ゆるがせにできない、大きな問題が隠されています。

 

それは最高裁が立法行為をしているのではないか、という問題です。

 

仮に、相続に関して、国会が定めた条文が最高裁によって違憲、無効であると判決、決定(以下では、便宜のため決定とのみ表示します)されたとしますと、相続に関する法的効力は相続発生の時点まで遡りますから、その決定の対象となった事実が発生した時点から、その決定の下された時点までに発生した他の事件についての決定(それは今問題としている事件とは結論が反対になってます)も違憲無効の条文に基づいて判断したものということになります。

 

このように、ある事件についての決定の効力が他の事件にまで影響することを事実上の拘束性と呼びます。

 

本件の決定では、対象となった相続は平成13年7月に発生していますから、実に、平成13年7月から本件の最高裁決定があった平成25年9月4日までの12年間の間に行われた、他の事件での、非嫡出子の相続分に関する裁判、遺産分割、債権回収、債務弁済などなど、無慮数万の法的処理の法的効力が覆ります。

 

裁判のやり直し請求、不当利得返還請求事件の多発、遺産分割のやり直し、これに伴なう家族内紛争の蒸し返し、そして相続税の更生の請求、修正申告、などなど、大混乱は必至です。

 

この混乱を避けるため、この最高裁決定は妙なことを付け加えました。少し長いので要約します。

 

<今般の決定の憲法判断は、本件被相続人の相続の開始時点から本決定までの間に開始された他の相続につき、民法900条4号但し書きを有効であることを前提としてなされた遺産分割の審判その他の裁判、遺産分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係には影響を及ぼさないが、関係者間の法律関係が確定的な段階に至っていない事案であれば、本決定により違憲無効とされた民法900条4号但し書きの規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとするのが相当である。>

 

要するに、最高裁は、法定相続分を非嫡出は嫡出の半分しか認めないとする、今となっては、違法無効な法的処理であっても相続関係者が今揉めていなければそれまで覆すのはよくないが、まだ今も揉めている場合には法定相続分を非嫡出も嫡出と同じとする処理をせよ、といいうことです。

 

この文章の名宛人は、相続事件を法的に取扱う、下級裁判所、弁護士、税理士です。

 

しかし、嫡出と非嫡出間の遺産を巡る裁判所での争いは財産の取り合いなのです。財産は必ず有限ですから、一方はうまくやったと思っていれば、他方はしてやられたと不満に思っています。

したがって、本件ではない他の事件が、今後、再度裁判所に持ち出されるときは<今揉めている>場合に決まっていますし、

本件ではない他の事件が、今後、裁判所以外の紛争処理機関(例えば、事業承継ADR)に、持ち込まれるときは、<今揉めている>場合に決まっているのです。

 

最高裁は、本件の決定によって、いったん寝た子を起こしたのです。

 

しかし、私が問題として指摘したいのは、このようにワケのワカラナイ基準であっても、最高裁が「他の事件」について、下級裁判所を拘束するような、このような判断基準を持ち出すべきではないという点です。

 

それは国会の仕事であって裁判所の仕事ではない。

 

現行憲法下の最高裁は、司法裁判所であって、国会ではないのです。司法とは、いま揉めている、この具体的事件について法的判断をする、ということであって、それを超えて、他の事件を下級裁判所がどう処理すべきかを指示すべきではない。

 

そのような権限は与えられてはいないのだ。

 

それこそ国権の最高機関である国会の権限を侵すものであり、憲法違反だ、という点です。

 

最高裁が国会のまねをすれば、最高裁には、複雑な立法作用を整理統合する能力はないから、事態はますます混乱する。

 

最高裁が、本件決定によって齎される大混乱を少しでも緩和する方針を示したかったのだろうと、そのきもちはわかるが、それほど混乱をおそれるのであれば、このように熟慮に欠ける決定は出すべきではなかったのだ。

 

弁護士 後藤 孝典

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