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後藤孝典が語る

虎ノ門後藤法律事務所(弁護士法人 虎ノ門国際法律事務所)代表
一般社団法人日本企業再建研究会(事業継承ADRセンター)理事長

2013.09.12

婚外子相続分2分の1違憲は家業を潰す

最高裁平成25年9月4日決定は、父母が結婚していないからという理由で法定相続分を嫡出子の二分の一とすることは、「子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすこと」だから許されないと非難しています。最高裁はその理由を、

①昭和22年の民法改正以降、国民の家族感が変化してきた、
②諸外国で婚外子差別外撤廃されてきた、ことに置いています。こんなことが理由になるわけがありません。

まず晩婚化、非婚化、少子化、中高年の未婚の子が親と同居する世帯、単独世帯が増加、離婚件数増加、再婚件数増加、家族感がどのように変化したのは確かでしょうが、大事なことはどう変化したか、です。

この点が最高裁は上記①に対応して、

(イ)『昭和50年前半ころまでは減少傾向にあった嫡出でない子の出生数はどその後現在に至るまで増加傾向が続いているほか』、晩婚化、非婚化、少子化、中高年の未婚の子が親と同居する世帯、単独世帯が増加、離婚件数増加、再婚件数増加、「これらのことから、婚姻、家族の形態が著しく多様化しており、これに伴ない、婚姻、家族の在り方に対する国民の意識の多様化が大きく進んでいる」ことを理由としてあげている。

しかし、これがどうして嫡出子でない子の法定相続分を嫡出子と同じにしなければならない理由になるか、だ。

最高裁は嫡出子ではない子の出生は昭和50年前半ころまで減少していた、その後現在に至るまで増加しているとして、嫡出でない子の増加は嫡出子でない子の法定相続分を嫡出子と同じにしなければならない理由と一つして位置づけている。

しかし、戦前は現在とはけた違いに嫡出でない子の出生は多かったのだ。

1925年は出生数に対して7.26%、
1930年は6.44%、
1940年は4.1%
ボトムを迎えるのは1978年で0.77%、
それから増加に転じているが2011年に2.22%、

2012年に2.23%のていどに過ぎない(以上いずれも人口動態統計から)。

最高裁の論理でいえば、戦前ではなぜ嫡出子でない子の法定相続分を嫡出子と同じにしなければならない理由が成立しないのか、おかしいではないか。


晩婚化、非婚化、少子化、中高年の未婚の子が親と同居する世帯、単独世帯が増加、離婚件数増加、再婚件数増加などが事実であろうと、これらは家庭が壊れてきているということであって、なぜ家庭が壊れてくると、嫡出子でない子の法定相続分を嫡出子と同じにして、もっと家庭を壊さなければならないことになるのか、おかしいではないか。

最高裁は②に対応して、

(ロ)ドイツ、フランスでは嫡出子でない子の法定相続分を嫡出子と差別する立法が撤廃されている、「差異を設けている国は、欧米諸国にはなく、世界的にも限られている」と言っているが、なぜこれが嫡出子でない子の法定相続分を嫡出子と同じにしなければならない理由になるのか。

最高裁は、家庭を個人が棲むところ位にしか思っていないようだが、家庭は古来家業を遂行する場所なのだ。 家業(もちろん農業・漁業を含め)においては、家産の承継は死活的に重要な意味をもっている。

全国の企業総数約420万社のうち99%は小規模、中小企業で、同族企業だ。この小規模、中小企業、同族企業が日本の産業の基盤をなしている。このように小規模、中小企業にとっては、遺産の最重要部分は中小企業の生産施設とか当該企業の株式であるから、その企業の生産と収益向上に貢献する可能性の高いほうに法定相続分を多くするのが合理的である。

家庭の外にいて、家産の承継ではなく、家産の取得だけを考えるものに対して、厳しくすることには合理性がある。家産の集中、累積は、単に物的財産の蓄積ではない。知識と技術の蓄積でもあるいわば、日本の国力なのだ。最高裁の裁判官たちは、家業とか老舗とか、事業を継続し、承継することの重要性を理解していない。

パリには「エノキアン協会」という名前の経済団体があり、これに参加できるのは創立以来200年以上の歴史がある企業で、しかも創業者の子孫が現在も経営を続けている優良企業だけに限定されている。伝統企業が名を連ねており、イタリア16社、フランス12社、日本からは4社が参加して、ドイツ4社、スイス2社、オランダ1社、北アイルランド1社、ベルギー1社、合計で8カ国、41社が参加している。そのうち、一番古い企業は実は、それは日本で、石川県小松市にある「法師旅館」だ。

718年(養老2年)の創業で、ギネス・ワールド・レコーズには「世界で最も歴史のある旅館」として登録されている。日本企業はほかに、虎屋(1526年京都で御所御用菓子商として創業、遷都ともに東京へ)、月桂冠(1637年創業)、岡谷鋼機(1669年創業)、赤福(1707年創業)が参加している。

日本の老舗企業のうち、創業以来100年以上経過している企業の数は、宗教法人、学校法人、医療法人など非営利法人を別にして、2008年現在で1万9518社あり、そのうち200年以上経過している企業は938社、300年以上が435社にのぼっている。

老舗企業がわれわれの周辺に存在している。日本は長寿企業の数では世界一だ。これは日本が誇るべきことだ。なぜこれほど長寿企業が多いのか。その理由の一つは、家業を大事にし、家産を分散から防御してきたからだ。このような日本が、なぜフランスやドイツなんぞの真似をしなければならないのか。これは日本の国力を減少させることになる、恥ずべき決定というべきだ。

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