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時価とは何なのか、という大問題の検討に入る前に、前回に引き続き公認会計士や監査法人に対する非難攻撃を続行したい。公認会計士や監査法人のあり方に対する疑問は数多いが、そのうちでも不思議でならないのは、彼らは、なぜ監査対象である企業から報酬を受け取ることが許されているのか、という疑問である。私がここで言おうとしているのは、監査法人が被監査法人から「無償又は通常の取引価格より低い対価による事務所又は資金の提供その他の特別の経済上の利益の供与を受けている場合」(公認会計士施行令7条1項5号)における監査のことを言っているのではない。またアーサー・アンダーセンの崩壊で広く知られるようになった、コンサルタント業務の対象企業を同時に監査している場合のことを言っているのでもない。このような露骨な利害関係がある場合については、平成15年の「公認会計士等に係る利害関係に関する内閣府令」の改正などによって規制法令はかなり整備された。そのような顕著な利害関係がない、通常の監査の場合に監査法人が被監査法人から報酬を受け取ることを言おうとしているのである。
おそらく公認会計士たちは、それに何の問題がある、と論駁するであろう。公認会計士法が公然と承認しているところである(第2条)し、それが認められなければ、公認会計士は生活できなくなってしまうではないか、という反論であろう。しかし、監査とは、監査対象企業の財務書類に誤りがないか不正がないかを調査することだろうから、監査法人と被監査法人との間には本質的な利害の対立がある。これが仮に弁護士の場合であれば、利害の対立する相手方から経済的利益を得た場合は、汚職行為として懲役3年の刑に処せられる(弁護士法26条、76条)。私は4年間、東京弁護士会で懲戒委員をしていた経験があるが、懲戒委員会は汚職行為に容赦はしない。退会命令か資格剥奪の懲戒処分はまず確実であろう。これに対し、公認会計士法には、会社の財務書類について証明をする場合は、その会社と利害関係を有するか否か、有するとすればその内容を証明書に明示せよ(25条)という条文はあるが、これに違反した場合の罰則規定がない。ずいぶんと甘い。私から見れば、報酬を受け取って証明するのが業務なのだから利害関係があるに決まっている、だから罰則規定がないのだろうと、勘ぐりたくなる。
たしかに、報酬を受け取ることは当然であろう。問題は、だれから受け取るのか、だ。私は、監査によって利益を受ける者から受け取るべきだと考える。利益を受けるのは、「投資者及び債権者」(公認会計士法第1条)であることには異論がなかろう。特に、上場企業の場合は、これは顕著である。投資家や債権者から報酬を受け取ることができる仕組みが作られていたら、アーサー・アンダーセンはエンロンの財務関係書類を大量にシュレッダーにかけるなどというおぞましい闇の作業に身を汚すことはなかったろう。もちろん現行法上、投資家や債権者から監査報酬を受け取る仕組みがない。しかし、ないなら作ればよいことだ。立法化することだ。そうすれば、投資家や債権者は監査法人や公認会計士に料金を払うことになるから、本当の意味で相互の競争と選別がはじまり、自浄作用が働くことになるだろう。ただ、そのような立法がなされるまでは、「公認」会計士となのるのはやめたらどうだろう。誰にも「公認」されていないのだから。
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