|
株式会社産業再生機構という、妙な名前の会社があります。新聞に毎日のようにこの名前が出てきますが、いったいなにをする会社なのでしょう。産業再生という名前からすれば日本の産業を再生する会社ということなのでしょうが、この会社は日本リーグの覇者として輝いたダイエー球団や福岡ドームなどの事業を救出するといってはいたけれど、できないことになったり、三井鉱山という古色蒼然たる会社を再建すると言ってはいたけれど、これも駄目になったり、ガタガタしている感じです。産業再生機構が順調に再生機能を発揮している企業といえば、地方都市の中小企業だけのようです。日本の産業を再生させることなどできそうにもないなー、という感じがします。
しかし、昨年、産業再生機構が政府の日程にあがり始めたころは、新しく商法に規定された会社分割の方法を用いて、不良債務の解消を図ることができないだろうかと、考え込んでいた私としては、心弾ませてその活動開始に注目していました。平成14年12月19日付けで政府の、産業再生・雇用対策戦略本部が公表した「企業・産業再生に関する基本方針」のはじめの方に「(1)過剰債務問題に対応するための基本的な考え方」という段落があり、「ムムムこうした企業であってもコアとなる事業に関しては十分な競争力がある場合が多く、これを過剰債務の原因となっている不採算部門から切り離すことにより、十分事業の再生を図ることが可能であり、また、こうした取り組みが雇用や取引先への影響を極力最小限にすることにも資することになる。」という下りがあります。これを読んだとき私は、政府が乗り出したのだ、これで自分の任務は終わるな、と思い、喜んだものです。この文章は、会社分割の手法を用いて企業の過剰債務問題を解決しようとしていると読めるからです。つまり、企業の抱えている悩みの根元である不良債務を処理しようとしていると読めるからです。
ところが、できあがった株式会社産業再生機構法の法令中には会社分割法制にふれた規定がまったくありません。これはいったい、どうしたことでしょうか。
縁あって、産業再生機構の前の担当大臣谷垣禎一氏にお会いしたことがあります。このままでは産業再生機構に「お客さん」は来ませんよ、使いやすくするためには債権を処理する観点ではなく、個別企業の重荷となっている債務を処理するという観点から様々な手法を使いやすくする法改正をすべきだ、というような話をしました。
去年から今年にかけて、株式会社産業再生機構を立ち上げる初期の頃には、同法には政府のカネを注入して債権者金融機関の債権を買い取る仕組みだけではなく、会社分割を使いやすくする手法が真剣に検討されていたと推定されます。別の言葉でいえば、日本全体の産業を再生する視点からのマクロ的手法だけではなく、個別の企業を活性化するためのミクロ的手法も検討されていたと思います。しかし、いつの頃からか、企業を活性化する視点は薄れてしまい、債権者である金融機関を救済する視点だけが幅をきかせるようになってしまったのではないか、と考えられます。その証拠に、産業再生機構は、「不良債権処理」を行うと公言するだけであって、「不良債務」を処理するとは、ただの一度も言ったことがないではありませんか。再生すべき産業とは債務者のことだ、という観点が抜け落ちているのでしょう。
|